救いがないわけではないが非常に悲しいストーリー。

人それぞれの「時間」の価値を問うような作品に仕上がっていた。

あらすじ

フェデックス社に勤める配達人の主人公がプロポーズ予定の彼女と別れ仕事をするために自社所有の貨物機に乗る。しかしその貨物機が何らかのトラブルで進路をずらし結果最悪の結果をもたらす。主人公は危機一髪生き延び無人島に漂着するが、そこには何もなく今まで文明社会の一員でありサバイバル知識ゼロの主人公は無事生き残ることができるのか…?


Cast Away (6/8) Movie CLIP - I'm Sorry, Wilson! (2000) HD

感想

無人島を生き抜く姿だけの単純な映画ではなかった。

 

この映画はミスリードがある。一見今作は「サバイバル生活を描写して脱出をして終わり」のような普通のサバイバル映画と勘違いする仕様になっているが、実際には、「生き抜くこと」「脱出すること」をメインに据えた映画ではない。本作の良さは「時間」に取り残された主人公の「死ぬよりつらい現実」を克明に描写するものであり、「時間」をテーマにした大作であると言える。

墜落(マン・オブ・スティール)

本作冒頭で主人公が搭乗している機は不時着する。ほぼほぼ墜落のような不時着だが主人公は何故か生き延び、無傷で危機を脱した。

実は今作の一番気に入らない部分がここである。

まず、海面を見る限りかなりの速度で飛行しているのが分かる。そのまま海面に不時着となればその衝撃はおそらく機体を砕くだろう。それにも関わらず機体前方は原型を留めていた。さらに不思議なのが主人公は着水直前に救命胴衣と懐中時計を取るために一度シートベルトを外している。この描写の直前にパイロットの一人が振動で天井に頭を強く打ち大量に出血していた。着水の直撃はこんな衝撃の比ではないのに、なぜ主人公は着水時の衝撃で怪我をしなかったのだろう。コックピットからの入水で衝撃が緩和されたという意見もあると思うが想像してほしい。バケツ一杯の水を思いっきりかけられるだけでもかなり痛いのに、何百キロというスピードで何トンという水が自分にぶつかってきて無事でいられると思うか。否。体はミンチである

この考察から伺えるように、主人公は事故の時点では「マンオブスティール」であったことが伺える。非常に興味深いシーンであった。

とまぁここまでこの事故について不満を述べたが、逆に今作で不満なのはこのくらいなので、これから作品を見る人は気にしないでほしい。普通に良作である。

何もないというつらさ

正直現代の苦痛でこれに勝るものはないと断言できる。

家族がいない、友がいない、恋人がいない、食事がない、飲み水がない、金がない、

どれ一つを取っても苦しくて仕方がないのに、主人公は無人島に流れ着き「たった一人」「なにもない状態」で生活を始めた。生きるために知恵を絞れる人間は幸福であると誰が言ったが、「無」の状態から様々な知恵を使いどうにか生活を成り立たせていくの描写はリアルで悲惨で、無人島生活に憧れている私の心をへし折ってくれた。

特に印象的な描写が「火おこし」である。我々が何気なく使っている「火」は実はとても貴重であり人間にとってなくてはならないものであると改めて認識できた。「火」は実用的というだけではなく、その模様は我々に活力を与えてくれるエネルギーであると考えている。そういった当たり前のことだが忘れがちな光景を呼び起こしてくれる素敵なシーンであったのは間違いない。本作品の一番好きな描写である。

イカダ怖すぎ、ウィルソン泣けた。

今作で主要人物の一人である「ウィルソン」。彼はバレーボールである。孤独から気が狂いそうになっている主人公が作り出した「イマジナリーフレンド」だが、彼以上に人間味があるバレーボールは他にあるだろうか?

私は本作を鑑賞しながら確信した。彼は人間だ。

そう思わせるほど、そのボールには表情があり、感情があるように見て取れた。

私の想像力が豊かすぎるのもあるだろうが、シンプルに「それ」が「」に見えて仕方なかったのだ。これは映画を見ればわかる。物に宿る圧倒的な人間味を感じたければ本作を必ず鑑賞すべき。数多くの映画を見てきたがこの感覚に類するものをこの作品以外にしらない。

それと、余談になるがイカダが怖すぎた。あれで太平洋を渡る主人公の逞しさには目を見張るものがある。

時間

本作の主題として「時間」の概念がある。

というのも地球の自転を基準に作られた時間とは別に、人には人の時間がある。

私が記事を書いているこの時間にも「ご飯を食べている人」「死にそうな人」「仕事をしている人」など様々な時間を人は持っている。記事を書いている時間は早く感じるが、ご飯をゆったり食べている人には時間の流れが遅く感じるだろう。

我々の「時間」への接し方は何億通りとある。

主人公が無人島にいた時間は「4年間」。その間の時間の流れはおそらく遅かったであろう。私は自分自身の経験から視覚や聴覚から得た情報量が多ければ多い程、さらに言えば感情の起伏が激しければ激しい程、時間の流れを早く感じるという持論を持っているがその理論に当てはめれば、あまりにも代わり映えしない無人島という閉鎖空間において主人公が受ける情報はすくなく感情に対するアプローチもおおよそ少なかったであろう。

これに対比して主人公の妻は時間の流れをとても早く感じていたのではと考える。理由は単純で情報社会に生き仕事をしているということもあるが、それ以上に夫を亡くした悲しみ、子供を産んだ喜び、結婚など、わかる範囲で羅列した中にもこれだけの大きなイベントがあって感情を大きく揺さぶられている事実がある以上、人生はせわしなく過ぎていたのではないかとそう思う。

そして2人が出会った時、2人の持つ「時間」と「時間」の齟齬が2人を苦しめた。

これは主人公たちだけに言えた話ではなく、人間と人間が接する時に誰しもが感じる事である。同じ時間でも何を感じて何を学んで何をしたか、その濃さや量というのは絶対的に変わっていく。何が正解か分からないが、それぞれの「4年後」を見た時にその人にとって接した「時間」がいい方向に働いていたらすごくうれしい事である。

締め方がこれでいいか分からないが、以上で感想解説を終える。

【おすすめ度】

☆☆☆☆☆☆☆

非常に面白い作品である。

サバイバルシーンは目を見張るものがあるし、主人公の変わりようや適応の仕方などの成長が見て取れ、自分の悩みが軽いものだと思わせてくれるようなマインドリセット系作品であった。それより「時間」について考えるきっかけをくれる思慮深い作品でもあった。悩みがある人や、身近な人とのすれ違いなどがある人には見てほしい。本作にその解決の糸口があるかもしれない。

著・なめこ汁

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