戦争とは麻薬である。そしてそれに囚われた主人公の行きつく先を想像してしまう作品。

あらすじ

舞台はイラク戦争、EOD(爆弾処理チーム)所属の処理担当が事故により死亡。その後任でイラクへ来た新しい爆弾処理担当は非常に経験豊富だが、ルール無視の爆弾処理をする破天荒極まる軍人だった。その新しい処理担当と他のメンバーとの溝は任務をこなすごとに深くなっていく。はたしてEODとして成り立つのか、どう向き合っていくのかを見ていく作品。


ハート・ロッカー

感想

イラク戦争

イラク戦争は即席爆弾(IED)との戦いだった。この戦争での米軍側の死者の多くは地中や車内に埋められた即席の爆弾が原因だ。今作はその爆弾を処理するプロに焦点を当てている。主人公は多くの米兵を救っているいわば英雄のようなものである。

しかしこの戦争は環境の過酷さ、どこにあるかわからない爆弾によるストレスなど様々な要因から心を病んだ(PTSD)者は多く、駐留中や本土帰還後の自殺者も問題になった。

本作はそんな背景も読み取れる作品となっており、イラク戦争を一兵士の視点で見ることができる為非常に有益な作品である。

戦争中毒

f:id:namekonameco:20191107003727j:plain

戦争とは麻薬である。本作の冒頭でもそう表現していたが、主人公はまさにその麻薬の中毒者だ。

そもそも一般人からしたら「中毒状態」であることがまず馴染みがない。なにかを異常なほど好きになるもしくは、それがないと生きていけないなど、対象に対して異常な執着を見せるのが中毒だ

好き」と「中毒」は全くの別のものである。「好き」は好きでいることを自分自身で選択可能だが、「中毒」は自分自身の力で好きをコントロールできないことを指す。つまり好き嫌いの次元ではなく、いつ何時もあってしかるべき物である。

お酒、タバコ、大麻、覚せい剤、セックスと様々なものに依存性を認めるが、「戦争」というものに対しても中毒性はある。もしろ1番危険な中毒であると私は考えている。

非常に危険な戦争になぜ中毒性があるかと感じる人もいるかと思うが、実は似たような「中毒性」を持つ事象が現代の日本でもある。それがジェットコースターである。これが大好きで仕方がない紳士淑女の皆さんは「戦争中毒」について最も理解に近い存在であるのではないかと考える。

彼らはなぜ怖いジェットコースターを何回も乗るのか、友人に尋ねたことがある。答えは「恐怖を楽しんでいる」「スリルが好き」など。絶叫マシンが苦手な私からしたら考えられない答えが返ってきた。

この対比構造は比べる規模の大小はあれ、本作の主人公チームと同じである。語弊を恐れずに述べるが、正常な人間と狂人とも取れる対比が両者にはある。

EODとしてイラクに何度も派遣され、幾度となく死線を潜り抜け命の危機を何回も味わってきた主人公はそのスリルが当たり前になり、逆にスリルがない日常が落ち着かなくなってしまった。

作中で、ルール無視で爆弾を解体していくシーンが度々見られるがあれは歴戦の隊員だからと言う理由だけではなく、より強いスリルを求めたいが為に行なっている事なのかもしれない。

どちらにせよ、それに巻き込まれたEODの隊員と主人公とは明らかな対比になっており、終わりがない戦争から抜け出せない主人公とその蟻地獄に巻き込まれまいと抵抗するその他を克明に描写する作品となっていた。

おすすめ度

☆☆☆☆☆☆☆☆

今作は私が非常に好きな作品であると言う理由もあり星が多めになっている。おすすめする理由は数多くあるが、その中でも特に作中に蔓延る生ぬるい嫌悪感。なにか靄がかかった背景描写など全体的にダークでシリアスなつくりになっており、鑑賞しながら様々なことについて考えてしまう作品になっている。主人公とは全く境遇が違うが理解できる点、理解できるからこそ分かる辛さのようなものを感じて感情移入が止まらなかった点も良い点であった。社会派映画としてこの作品に並ぶ良作はなかなかないであろう。必見である。

ジェレミーレナーが大好きということももちろんある。

ハート・ロッカー(字幕版)

著・なめこ汁

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事